
VOX AC4C1-12 のスピーカーを Celestion の G12M Greenback に交換した話
—— エレキギターはアンプこそ重要。
—— ギターアンプはやっぱり真空管に限る。
という想いから 4 年ほど愛用しているのがこちらの真空管アンプ。


音色自体は非常に好みですし、フル真空管なだけあって練習用途には申し分ないのですが 「もうワンランク上の良い音を目指せないかな」 と自分なりにいろいろと調べ、中に搭載しているスピーカーユニットを交換することにしました。
結論から言うと期待していたほどの劇的な変化は感じられませんでしたが、コストを考えるとまずまずの成果かな、とひとまず良しとしています。
ブリティッシュ・ロックの基礎の音は VOX にあると思う

イギリスの伝統的なギターアンプメーカーである VOX。その代表モデルである AC30 という30ワット出力のアンプは、THE BEATLES、Queen のブライアン・メイ、U2 のジ・エッジ、ロリー・ギャラガー等の使用で有名な名機です。
いっぽう僕の所有する AC4C1-12 は、その AC30 を家庭での練習用途で使えるようにと 4 ワット出力にまで小型化したもの。小型モデルとはいえ真空管アンプ特有の反応の速さと暖かみのある音色は健在で申し分なく、VOX ならではの中域にギュッと成分が詰まったかのような音像とザラついた質感のオーバードライブサウンドは、確かに往年のブリティッシュ・ロックなサウンドです。
もちろん Marshall や Fender アンプのサウンドも大好物で甲乙つけ難いですが、一番の基本となる音はなんだかんだ VOX だと思うのですよ、ブリティッシュ・ロックが好きならね。
そして何より搭載しているスピーカーが 12 インチ一発というのが非常に優れていると思います。家庭用小型アンプだと 10 ~ 8 インチ以下が主流なので、12 インチサイズというのは意外と珍しいんですよね。
そんなわけで、隣人からの苦情が来ないギリギリの音量で日々ギターを弾いて楽しんでる今日このごろ。
実際の音色については、こちらの動画が非常にわかりやすいです。
もうワンランク上の良い音を目指せないだろうか
元が 60 年代に設計されたものだけあってか中身の構造自体は非常にシンプル。ということでオーナーによっては自分でカスタマイズする人もチラホラいるらしいです。
既に充分良い音であることは間違いないのですが、真空管アンプにしては相当安価なモデルなので中身のパーツを少しアップグレードするだけで更なる高みに行けるかもしれない。あいにく電子工作のスキルが無いので基盤周りのカスタマイズはできませんが、真空管やスピーカーユニットの交換くらいならできそうです。
標準搭載しているスピーカーの評判がイマイチ
VOX のアンプは原則として Celestion というメーカーのスピーカーを採用しており、AC4C1-12 にもここの製品が搭載されています。裏蓋を開けてみるとそこには VX 12 と書かれたユニットが。Celestion のカタログを見てもそんなモデルはありません。調べたところ、どうやら OEM 提供されているものらしいですが、中身は通常ラインナップにある Seventy 80 というモデルと全く同じとのことです。

この Seventy 80 は Celestion の 12 インチ型の中で最も安価なモデルで、Marshall や Orange など他メーカーの中価格帯までのスピーカーキャビネットでも採用されているものでした。安価なだけあって Celestion の定番モデルと比較すると数段格は落ちるらしく、可能なら交換するのが望ましいといったレビューが多く見られました。
スピーカー交換ならハンダ付け作業は不要でドライバーだけで済むため簡単です。よしこれをやろう。
どのスピーカーユニットにすべきか
ギターなら楽器屋で試奏すれば音の違いを確かめられますが、アンプのスピーカーとなるとそうはいきません。仕方がないのでネット上に落ちているサンプル音源を漁ったり YouTube で比較動画を観まくっていくつか候補を絞りました。
![]() | VOX AC30 リリース時に標準搭載されていたユニット。現在でも上位モデルであるAC30HW2X にはこのユニットが採用されている。「中域にギュッと成分が詰まった」「適度に潰れた」音像のイメージはだいたいこのユニット由来な気がする。 |
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![]() | 世界初のセラミックマグネット搭載ギターアンプ用スピーカーで、おそらく Celestion の中で最も代表的な定番ユニット。Marshall アンプでの採用事例が有名だが、現行の AC30 (通常モデル)にもこれが搭載されている。 |
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![]() | ヴィンテージな音にもモダンな音にもそつなく対応できる優等生的なキャラとのこと。高価格帯のスピーカーキャビネットに採用される事例が多い。 |
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あまり冒険せず定番モノに絞ったという感じです。現状まだ自分の中でハッキリとした指標を持ち合わせてるわけではなく、今のアンプを単純に正当進化させられたら程度のモチベーションなので、王道路線で検討しました。
とりあえず無難そうな G12M Greenback に決定
最初は一番 VOX らしさのある Celestion Blue にしようと考えたのですが、ユニットの奥行きが他 2 種よりもずっと大きく AC4C-12 の筐体に収まらなそうだったので G12M Greenback にしました。


サウンドバウスで注文してから 2 日後に到着。相変わらず早い。ちなみに届いたユニットは英国製でしたが、中国製の場合もあるそうです。とはいえ今更どちらの方が良い悪いという話でもないと思いますが。
全く同じサイズなので問題なく収まりました。接続コネクタはファストン S タイプのためハンダ付けせずに配線できます。重量がかなりあることを除けば非常に簡単で助かります。
出音の印象
冒頭でも書いたとおりそこまで劇的な変化は感じられなかったものの、明らかに換装前よりも良くなったのは間違いありません。
具体的には、高域と低域が明らかにクリアになった点が挙げられます。今までは過剰に中域に音が寄っていたのか他の音域がイマイチ霞がかっていたような印象だったのが解消されたように感じました。逆に中域成分は換装前より若干抑えられたものの、言い換えれば各音域がバランス良く出力されるようになり、より自分の出す音像がハッキリと分かるようになったと思います。
つまり良くも悪くもごまかしが効かなくなったということです。上手に弾けばそれに応えてくれるし、下手だとそれが露骨に出音に表れます。練習環境としてはむしろ良いことですね。
一方で全体的に音量が少し落ちたような印象を受けました。今までは Gain 3 時 + Volume 9 時 が限界だったのが、Gain 3 時 + Volume 10 時半 まで上げられるようになりました。許容入力、感度、インピーダンスのどれも同じスペックのため理論上音量差は発生しないはずなのですが。中域成分が控えめになったことで聴覚上の体感音量が下がったように感じられるだけなのでしょうか。
まぁ Volume を更に上げられるというのは、その分アンプのキャラをより引き出せるようになったということなので、むしろポジティブに受け止めています。


これが僕の基本のセッティング。このアンプはあまり緻密な音作りができないのが特徴で、結局この単純明快なセッティングが最適解だったりします。これで充分に良い音が出せる、というよりこれで良い音を出すよう弾き手に要求されるわけです。